PANDAS
チックとは突発的で、不規則な、からだの一部の速い動きや発音を繰り返す状態のことで、この症状が一定期間継続する障害をチック症またはチック障害と言われています。
チック障害はには以下のような分類があります。
・一過性チック障害
運動チックおよび発音チックの両方またはいずれか一方の症状が4週間以上12か月未満持続する障害
・慢性チック障害
運動チックと音声チックどちらか一方の症状が12か月以上持続し、3か月以上持続してチックが消失することがない障害。慢性運動性チック障害、慢性音声チック障害とも言われます。
・トゥレット障害
多種類の運動チックと一つまたはそれ以上の音声チックが1年以上にわたり続く障害
チック障害(チック症)は「こころの問題」であるとされていることが多いです。しかし、原因があります。
・連鎖球菌感染症
・グルタミン酸/GABAバランス異常
が考えられます。
連鎖球菌が感染し、その連鎖球菌に対する様々な自己抗体が産生され自己免疫的に大脳基底核を攻撃してしまいます。もともと大脳基底核は、常時興奮している視床のニューロンを強く抑制しています。この抑制がきかなくなることで、異常な興奮が伝導され「運動チック」「音声チック」の出現に繋がってしまいます。また脳神経ニューロンにおいて神経原線維の周囲を包み電気刺激を効率よく伝達するための鞘を構成するチューブリンタンパクに対する自己抗体も産生されてしまいます。結果的に、脳神経のシグナル伝導も低下してしまいます。
この病態をPANDAS(Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorder Associated with Streptococcal infection)といいます。
特徴的なのは突発性であるということです。3歳〜思春期の間で発症します。
上記の症状の他にも興奮・多動・睡眠障害・食欲不振・尿の問題などが関連します。
大脳基底核の機能は、運動調節・認知・学習・感情・動機付けに関連しています。連鎖球菌抗体により自己免疫的に障害を受ける事で、これらの機能が低下します。
連鎖球菌に対しての抗体としてはASO(Anti-Streptolysin O)の測定がメジャーですが、その他にも以下の抗体を調べると脳神経への影響のより精密な診断になります。
・Anti-Dopamine Receptor D1
・ 〃 DL2
・Anti-Lysoganglioside GM1
・Anti-Tublin
・Ca/Calmodulin Protein Kinase Ⅱ
・Anti-Streptococcal Dnase B
*Anti-Streptolysin OおよびAnti-Streptococcal Dnase BはThe Great Plains Laboratoryの連鎖球菌抗体検査で測定可能です。
*その他の抗体に関しましてはmoleculera labsのCunnigham Panelで測定します。ご希望の方は以下のメールアドレスにご連絡ください。
jun-dental@cy.tnc.ne.jp
連鎖球菌は発酵によりL-乳酸・D-乳酸を産生します。
L-乳酸は解糖系成分の一つとなりますが、D-乳酸はMCT1(MonoCarboxylateTransporter1)に対して、ピルビン酸およびL-乳酸と競合的に拮抗します。結果的にD-乳酸はミトコンドリア機能障害を誘発する原因になってしまいます。
よってPANDASの疑いがある場合には、尿有機酸検査などでミトコンドリア機能を確認しミトコンドリア機能をサポートするべきです。
*連鎖球菌抑制へのアプローチ方法は2月のARPウェビナー(オンラインセミナー)の中でお話しいたします。ぜひご参加ください。
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脳内では、脳内神経伝達物質が合成・代謝され脳を興奮したり抑制したりそしてこのバランスを保ったりしています。それはドーパミン、グルタミン酸、GABA、セロトニンなどによります。
興奮を起こす脳内神経伝達物質はグルタミン酸です。チック症の発症の原因の一つとして、このグルタミン酸の脳内過剰も考えられます。グルタミン酸はGABAの前駆物質です。GABAは抑制系脳内神経伝達物質ですのでグルタミン酸からGABAが合成されれば脳の興奮は落ち着きます。
チックが出るということは脳内グルタミン酸の過剰であるということが考えられます。
では、なぜグルタミン酸過剰になるのでしょうか?
グルタミン酸からGABAが合成されるにはグルタミン酸デカルボキシラーゼという酵素が関与しています。そして酵素は補酵素が結合して酵素活性が起こります。この酵素活性を起こすのに必要なものがビタミンB6なのです。
結果、ビタミンB6欠乏では脳内グルタミン酸の過剰が生じ、脳が興奮しチックのような動きや発音を出現させてしまう可能性があります。
ちなみに、脳内で利用されるビタミンB6とは、ビタミンB6が肝臓で活性を受けたP5P(ピリドキサール5リン酸)です。もし、チックが出現している方にビタミンB6を服用させ改善を狙うならば、肝機能を正確に評価し対応することが望まれます。もし脂肪肝などにより肝臓の機能低下があるならば、ビタミンB6の活性も難しくなるでしょう。その場合には、まずは肝臓へのアプローチも重要になります。もしくは直接、P5Pを補給することが有効でしょう。
ビタミンB6は動物性タンパクに多いですから、炭水化物・糖質に依存した食生活では欠乏しやすいです。また、このような食習慣では肝臓への脂肪変性も併発していることが多いです。
ビタミンB6(P5P)はセロトニンの合成にも必須の補酵素です。チック症であるならば、精神症状を合併している可能性も考えられます。さらに、セロトニンはメラトニンの前駆体です。メラトニンとは睡眠を誘導する脳内神経伝達物質です。つまり、睡眠障害も合併している可能性もあるということになります。
なおビタミンB6(P5P)の補給に当たっては、尿有機酸検査を実施し、キノリン酸が上昇していないことを必ず確認してからにしてください。キノリン酸は脳神経に障害を起こす有機酸です。トリプトファンから代謝され産生されます。NAD(いわゆるビタミンB3)を合成するために発生してきますが、マグネシウム欠乏が生じている場合などではキノリン酸でストップしてしまいます。マグネシウムクエン酸とともに摂取する事が安全です。
また、キノリン酸は脳内で鉄と錯体をつくり脳神経細胞に対して酸化的損傷を起こします。良かれと思って摂取したビタミンB6やトリプトファンや鉄が精神神経症状を悪化させる事になってはいけません。
*食事やサプリメントからの興奮毒素の摂取にも十分注意して下さい。
・グルタミン酸 ・MSG
・味の素 ・アミノ酸類(原材料にこう記載されていたらグルタミン酸です)
・アスパラギン酸 ・アスパルテーム(人工甘味料)
・システイン ・グルタミン
CSA総合便検査にて、他の腸内細菌・炎症・免疫・pHなどとともに連鎖球菌の感染確認をおこなうことも推奨いたします。
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