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遺伝子栄養療法(ニュートリジェノミクス)


現在、様々な分野で、遺伝子解析をもとに、個々に合わせたオーダーメイド医療が進んでいます。癌治療をはじめ、自閉症スペクトラムやうつ病、統合失調などの治療に、遺伝子解析が利用されています。

まずは、epigenetics(エピジェネティクス)という言葉から説明します。

epigenetics(エピジェネティクス)とは・・・?

一般的には「DNA塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研究する学問領域」と言われています。

遺伝子の発現はセントラルドグマ説で提唱されたように、DNA複製→RNA転写→タンパク質への翻訳→形質発現の経路により、DNAに記録されている遺伝情報が表現型として実現した結果とされてきました。

セントラルドグマにおける形質の変化とは、遺伝情報の変化であり、その記録媒体であるDNA塩基配列の変化が原因となっています。

先天的には同じ遺伝情報、つまり同じゲノム(DNA塩基配列)であっても、細胞レベルあるいは個人レベルの形質の表現型が異なる例もまれではないです。

エピジェネティクスの内容は、普遍的に定義されたものはありません。しかしながら、染色体クロマチンを構成するDNAのメチル化およびヒストンの化学的修飾に重点を置いて説明されます。

DNAメチル化あるいは脱メチル化により、塩基配列情報自体には変化がなく、遺伝子発現のオン/オフが切り替わります。

高等動物においては、正常な発生と細胞の分化においてきわめて重要な役割を担っています。

DNAメチル化は、人が「自分が今どこにいるのか?」を記憶できるように、細胞が安定的に遺伝子発現パターンを変化させたり、遺伝子発現を減少させたりします。例えば、胚発生の間に、膵臓ランゲルハンス島となるようにプログラムされた細胞は、ランゲルハンス島であるようにシグナルを受け続けなくても、生物の一生涯にわたって、膵臓ランゲルハンス島であり続けるということも、DNAメチル化が働いているからこそなのです。

ということは、様々な疾患に罹患し、組織や細胞の機能低下が生じている背景には、DNAメチル化の低下が必ずと言っていいほど関与しているということになるのです。

DNAメチル化は、時間とともに宿主のゲノムに取り込まれたウィルスやその他の有害な要素の遺伝子発現を抑制します。そして、クロマチン構造の基礎を形作ります。これによって細胞は単一不変のDNA配列から多細胞生物に必要な無数の特徴を形成することができるのです。

DNAメチル化はまた、ほとんど全ての癌の発達においてき極めて重要な役割を果たしています。広範囲の低メチル化は、癌の発達および悪性化と関連しています。

低メチル化をサポートすることがエピジェネティック治療の標的であるのです。

どんな疾患(癌や自閉症スペクトラム、うつ病、統合失調症など)に対する、治療であっても、低メチル化をサポートすることは、非常に重要な治療になります。

では、メチル化:methylation(メチレーション)とは何でしょう・・・?

様々な基質にメチル基CH3が置換または結合することを意味します。

生物の機構では、メチル化は酵素によって触媒され、メチル化は重金属の修飾、遺伝子発現の調節、タンパク質の機能調節、RNA代謝に深くかかわっています。

メチル基はからだのメッセンジャーで、運送屋で、撹拌機です。メチル基は、他の化合物と一緒に一挙に反応をスタートさせます。

例えば、遺伝子をスイッチオンにし、あるいは酵素を活性化します。

メチル基がなくなり、あるいは除去されると遺伝子のスイッチが切れ、酵素は不活性化することにより、反応は停止します。

または、メチル基が無くなったのに、望ましくない時に遺伝子にスイッチが入るときもあります(例えば癌細胞に関連する遺伝子)。

DNAメチル化とタンパク質メチル化は、エピジェネティクスに寄与するのです。

ヒトの組織は約25000個の遺伝子を持つことが分かっています。

ヒトには環境もしくは親由来の100~200の遺伝子突然変異が100~200存在します。

コードしているタンパク質を変異させる場合とさせない場合があります。

例)MTHFr遺伝子のSNPは30%程度の人に見られます。

とくに自閉症スペクトラム障害では、DNAメチル化の影響を強く受けます。

そして、大事なことは、環境要因(有害重金属:水銀、ヒ素、鉛、アルミニウム、有機溶剤など)さらに栄養状態がエピジェネティックな異常を強く受けることになるということです。

環境要因は母親の体内に蓄積されていた重金属や生まれてから実施する予防注射などです。

それによりインプリンティング(遺伝子のすり込み)が生じてしまいます。

そして生まれる前から、DNAの変化は母体の栄養状態(メチル基をいかに供与できるかの状態)によって蓄積します。

つまり、遺伝的に変異のあるご両親から生まれても、症状を発現するかどうかは、母体にいる間のメチル基の供与状態によるということになります。

母体の栄養状態がいかに重要かが理解できると思います。

予防注射を受けた全員が自閉症を発症するのではなく、低メチル化である場合に、その環境的要因によって遺伝子発現に変化を生じてしまうわけです。遺伝子は常に複製され続けます。お母さんのお腹の中にいるこの間に、メチル基をいかに供与できるかが発現を左右します。

遺伝子変異は不変ですが、遺伝子の発現は終始変わりうるものです。また、遺伝も可能であります。

つまり、DNA自体は変化しないとしても、DNAが発現する方法は終始変わりえるのです。

そして、その発現機能はメチル化に依存しています。

ヒトにおける遺伝子すべてを調べるのではなく、メチル化に関わる少ない遺伝子の範囲で、遺伝子検査を行い、一塩基多型(SNP)と呼ばれる特定の遺伝子変異を確認することができます。

その検査の結果に基づいて、正確に絞った治療や予防を行うことが可能です。

つまり、遺伝子的に弱い部分を迂回するために必要な特定の補酵素・補因子(ビタミン・ミネラル)の確認が可能になるということです。これを「ニュートリジェノミクス」と言います。

まさに、一人一人、個人におけるオーダーメイド医療であり、遺伝子栄養治療(遺伝子栄養療法)です。

ニュートリジェノミクスは遺伝子を標的とする栄養補給です。

遺伝子変異は、理想的な機能に必要な全ての生化学的な作用を実行する能力を損ないます。

その結果、体は何かを大量に産生したり、極度に少なく産生したりしてしまうことによって、生化学的なアンバランスを生じることとなり、障害や最終的には疾病に繋がってしまいます。

ニュートリジェノミクスは、体が必要とするにも関わらず、遺伝子変異のために適正に産生することが出来ない栄養成分の欠損部分を供給することによって、遺伝学的に誘発される機能の低下を迂回し、適正な機能を回復させます。

ニュートリジェノミクスを用いて、メチル化経路にある遺伝子の変異を迂回するという、心身一体的なアプローチを行うことが可能です。

遺伝子は変更できないけれども、遺伝子の作用を変えることは可能なのです。

ニュートリジェノミクスの目標は、日常生活の中で、体が健康的に機能するように、遺伝子的に体が必要とする栄養成分を、体に供給するということにあります。

*MPA(メチレーション遺伝子検査)とニュートリジェノミクスにより可能なことは以下の通りです。

メチル化サイクルにおいて、重要な場所で、SNPの存在を確認します。

適切なサプリメントを使用して、これら遺伝子の作用をコントロールし、実質的に遺伝子変異を迂回して、メチル化サイクルを最適化させます。

メチル化サイクルの機能により行われる全ての重要な作用から恩恵を得ることができます。

メチル化の助けを借りて神経系炎症を減退させ、または神経系炎症の効果を修復し、様々なからだの組織の生化学を改善させることができます。

時の経過とともに、アンバランスを改善し、症状を和らげ、健康への可能性を高めます。

遺伝子検査は現在有効な方法を教えてくれます。それも、5年後、10年後、50年後にも同じように有効な方法をです。つまり、一生に一度の検査と言ってもよいでしょう。

ニュートリジェノミックスによる治療の効果は、尿中有機酸検査・尿中アミノ酸検査・尿経路排泄重金属検査などのバイオメディカル検査を用いて確認します。SNPが生理的機能に与える影響を評価するためには、バイオメディカル検査が必要になります。

メチル化経路の重要な場所での遺伝子多型の影響の特徴をよく知ることによって、お子様やあなた自身の健康を損ねている特異的な個々のアンバランスを示すロードマップを作製することが出来ます。

メチレーション関連遺伝子検査、ニュートリジェノミクスを通じて、これらの遺伝子の脆弱な場所を正確に確認できれば、適正な栄養サプリメントに焦点を絞ることが可能になり、これら遺伝子の重要な生化学的作用を最適化させることが可能になるのです。

Dr.Jun Suzukiは自閉症に限らず遺伝子栄養療法において、Drエイミー・ヤスコ(米国)のプロトコールを推奨し実践しています。

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